1.メンタルヘルス不調の現状
平成24年の自殺による死者数約2万8千人中、その動機や原因が健康問題にあるという割合は、実に約半数になります。そして、自殺につながる健康問題の筆頭がメンタルヘルス不調です。
厚生労働省の調査によると、メンタルヘルスに影響がある仕事上のストレスの大きな原因の一つに、「職場における人間関係」があることが分かっています。
☆未然防止や早期発見・早期対応には人間関係を構築するスキルアップが必要不可欠
次に、精神疾患で医療機関を受診する方の中では、「うつ病」などの気分障害が最も多く、年を追うごとに受診者数も増えています。年齢別でみると男女とも30代から50代が多く、女性だけでみると70代以降も多いのが特徴です。
メンタルヘルス不調は347種類もあり、代表的な「うつ病」の背景には、単なるストレスだけではなく、他のメンタルヘルス不調が隠れいているケースもあります。
☆代表的なうつ病(気分障害)対策と、急増している新型うつ病と呼ばれる不調への対策が 必要不可欠
2.なぜメンタルヘルス不調が増えているのか?
(1) ゆとり世代に代表される、健康だがストレスに弱く、人間関係の構築が不得手(社会人基礎力不足)な労働者が、全体の約35%を占めています。
(2) 職場不適応問題の放置が職場不適応症(適応障害)を生み、職場のメンタルヘルス問題の大きな原因となっています。
(3) 本人も周囲も不調に気が付かない労働者が全体の約40%もいます。
(4) メンタルヘルス不調の問題は、企業経営の破綻と労働者の人生崩壊につながる可能性があります。
☆主な原因の職場不適応問題を改善することが企業を成長・存続させ、労働者のモチベーション維持に必要不可欠
3.行政の対策は?
(1) 精神障害等による労災認定数は右肩上がりになっています。
(2) 2011年12月26日に労災の認定基準「心理的負荷による精神障害の認定基準」が変更されました。
(3) 雇い入れ時の健康診断とハラスメント対策が必須となります。
(4) 2020年までにすべての企業がメンタルヘルス対策を実施するように計画されています。
☆政府は制度改正と臨検を強化し、労働安全衛生法違反が無いよう指導することで取り組みの入口を提示
4.メンタルヘルスは労使双方で取り組む必要あり
(1) 労働契約法と労働安全衛生法では企業に「安全配慮義務」を労働者には「自己健康管理義務」をそれぞれ示しています。
(2) 政府が作成している「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は近い将来法制化の動きがあります。
(3) 指針では「4つのケア」を継続的かつ計画的に進めるよう示されています。
5.「4つのケア」
(1) セルフケア・・・事業者は労働者が以下のセルフケアが行えるよう支援します。
① ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
② ストレスへの気づき
③ ストレスへの対処
(2) ラインによるケア・・・管理監督者の役割は重要です。
① 職場環境の把握と改善
② 労働者からの相談対応
③ 職場復帰における支援、など
(3) 事業場内産業健保スタッフ等によるケア・・・セルフケアおよびラインによるケアが効果的に実施されるよう、労働者及び管理監督者に対する支援を行うとともに、次に示す心の健康づくり計画の実施に当たり、中心的な役割を担います。
① 具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
② 個人の健康情報の取り扱い
③ 事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
④ 職場復帰における支援、など
(4) 事業場外資源によるケア・・・
① 情報提供や助言を受けるなど、サービスの活用
② ネットワークの形成
③ 職場復帰における支援、など